トップ

知識ゼロから不利益ゼロへ
知識を蓄え、不利益なくトラブル解決


札幌の弁護士
夫婦問題・相続問題
・交通事故など
日々のトラブルを解決できるよう
皆さんに学びを提供します。

smart_slider_img1

弁護士内藤皓太LINE公式アカウントでも
イベント情報・役立つ情報を発信しています。

新着記事

交通事故
”人身傷害保険”とは!?
被害者側の自動車保険である「人身所外保険」について詳しく解説しています。人身傷害保険の仕組み・メリットを理解して、不利益ゼロを目指しましょう!
事業所得者の休業損害
【事業所得者の方、必見!】個人事業主の休業損害について、確定申告書から基礎収入額を把握する方法や休業日数の考え方などを詳しく解説しています。休業損害の知識を蓄え、不利益ゼロを目指しましょう!
給与所得者の休業損害
【会社員の方、必見!】事故で休業したときに生じる休業損害について、賠償請求に必要となる書類、損害額の計算方法などについて詳しく解説しています。休業損害の知識を蓄え、不利益ゼロを目指しましょう!
専業主婦(主夫)の休業損害~基礎収入特化編~
【専業主婦の方、必見!】この記事では、主婦休損の基礎収入について事例をふまえて解説しています。主婦休損の知識を蓄え、不利益ゼロを目指しましょう!

”人身傷害保険”とは!?

突然ですが、「人身傷害保険(または人身傷害補償保険)」という保険をご存じですか?

交通事故の被害にあったとき、通常は、加害者側の保険会社から保険金が支払われることとなります。

この“加害者側の保険会社”には、強制加入の「自賠責保険」、任意加入の「対人賠償保険」があり、一般的には“対人賠償保険”から保険金が支払われます。(関連記事:保険金を支払うのは誰!?)

これらの加害者側の自動車保険とは別に、被害者側の保険として「人身傷害保険」があります。

この記事では、被害者側の保険である人身傷害保険について、その特徴やメリットなどを詳しく説明していきます。

事故の不利益をゼロにできるよう、人身傷害保険に関する知識をしっかりとみにつけておきましょう!

人身傷害保険とは?

この項では、人身傷害保険の特徴について説明します。

対人賠償保険の仕組み・特徴

被害者側の保険である“人身傷害保険”の特徴を理解しやすくするため、まずは、加害者側の保険である“対人賠償保険”の仕組みを簡単に説明します。

対人賠償保険とは、人身事故の加害者が任意に加入する自動車保険で、被害者が被った損害はこの対人賠償保険から支払われるのが一般的です。

この保険の特徴として抑えておきたいのは、人身事故の加害者(保険の被保険者)が被害者に対して損害賠償責任を負う場合に、その責任の範囲で保険金を支払うという点です。

下の図を見てください。

対人賠償保険の仕組み

この図からイメージできるとおり、対人賠償保険は、人身事故の加害者が被害者に対して損害賠償責任を負うことを前提として保険金が支払われ、るという仕組みになっているのです。

ここでのポイントは、「対人賠償保険は、人身事故の加害者が被害者に対して損害賠償責任を負うことが保険金支払いの前提になっている」という点です。

人身傷害保険の仕組み

対人賠償保険の仕組みについてわかったところで、今度は人身傷害保険についてみてみましょう。
下の図をご覧ください。

人身傷害保険の仕組み

図からも分かるとおり、人身傷害保険では、人身事故の加害者が被害者に対して負う責任については全く考慮されません

つまり、加害者の賠償責任とは関係なく、被害者に発生した損害について保険金が支払われる仕組みとなっています。

これは、人身傷害保険という保険商品が作られた経緯をみればご理解いただけます。

もともと人身傷害保険が存在しなかったころ、加害者が支払の責任を負う金額が確定するまで、被害者は対人賠償保険から保険金を受けとることができませんでした。
今でこそ治療費や休業損害といった実損(損害額が毎月確定する費目)については支払いを受けられるのが一般的ですが、十分な休業損害が支払われなかったり、通院費用などを立て替えて支出しなければならなかったりと、被害者の経済的負担が大きくなってしまっていました。

そこで、加害者が支払の責任を負う金額が確定する前に、被害者に保険金を直接支払うことで救済を図ろうと、人身傷害保険がつくられたのです。

というわけで、
人身傷害保険は、加害者の賠償責任に関係なく、人身事故の被害者に対して保険金が支払われるという点に特徴がある!

ぜひ覚えておいてください!

人身傷害保険のメリット

ここまでで、人身傷害保険の特徴をご理解いただけたのではないかと思います。

この項では、この特徴を踏まえ、人身傷害保険のメリットなどについて説明したいと思います。

メリット1:保険金が早期に受け取れる

先に説明したとおり、対人賠償保険は、人身事故の加害者が被害者に対して損害賠償責任を負う場合に保険金が支払われる仕組みとなっています。

そのため、保険会社が保険金を支払うためには、その前提として、加害者が被害者に賠償義務を負う損害額を計算する必要があります

損害額は、まず対人賠償保険の内部基準に基づいて計算されることとなりますが、その相当性などに疑義がある場合には、保険会社と話し合いをしなければなりません。

このようなケースでは、対人賠償保険との話し合いを終えた時点で初めて賠償額が決定するため、保険金が支払われるまでに相当な期間を要してしまうのです。

これに対し、人身傷害保険では、保険約款で予め定められた基準にしたがって保険金額が算定されます。

“加害者が被害者に対して賠償責任を負う金額”が算出されるのではなく、保険約款の計算方法にしたがって支払われるべき保険金額が計算されるため、その相当性などが問題になることは通常考えられません。

そのため、保険会社との話し合いなども必要なく、対人賠償保険の場合よりも早く、保険金を受け取ることができるのです。

このように、加害者の賠償責任の範囲が保険金支払いに影響するか否かという“対人賠償保険”と“人身傷害保険”の特徴の違いは、保険金の支払われる時期に影響することとなります。

メリット2:被害者の過失部分についても保険金が支払われる

人身傷害保険では「加害者の賠償責任に関係なく保険金が支払われる」ため、被害者の過失割合に応じた損害部分についても保険金が支払われるということになります。
どういうことなのか、具体的にみていきましょう。

まずは、“過失割合”について簡単に説明します。

“交通事故”と一言でいっても、停車中に後方からぶつけられる“追突事故”や交差点での “出合い頭事故”など、その発生状況は様々です。

追突事故の場合(ここでは、赤信号に従って停車していた車両に追突した事案を想定しています)、被害車両の運転手が、後方の車に衝突されることを見越して、予め横に避けておく、、、なんてことは不可能ですから、被害者の過失はゼロとなります。

他方、出合い頭事故では、(もちろん発生状況にもよりますが)「交差する道路から車が直進してくるかもしれない」とか「車が飛び出してきたときに備えて速度をおとして走ろう」などと、交通事故の発生を予見して何らかの予防措置をとることも可能です。

このような状況で交通事故が起こってしまった場合には、どちらか一方のみが悪いとはいえず、当事者Aの落ち度20%、当事者Bの落ち度80%などと、当事者の双方に落ち度があったと評価されることとなります。

このように、交通事故発生の責任が、どちらの当事者にどれくらいあるか?を表した数値を“過失割合”といいます。

それでは、本題に戻ります。

被害者の過失割合がゼロという場合には、被害者に発生した損害全額に相当する保険金が、対人賠償保険から支払われることになります。

ですが、被害者にも一定の過失があるという場合には、損害全額分の保険金を対人賠償保険へ請求することができません!

被害者に発生した損害のうち、自身の過失割合を控除した金額が保険会社から支払われることになります。

これは、被害者自身の落ち度により発生した損害についてまで、加害者に賠償責任を負わせることは不公平といえるためです。

このように、事故の被害者にも過失があるとされる場合には、被害者が受けた損害全額の補償を受けられないこととなってしまうのです。

これは、“人身事故の加害者が被害者に対して負う責任の範囲で保険金を支払う”という対人賠償保険の仕組みにもとづくものです。

ですが、どうでしょう?
たとえ被害者にも落ち度があるとはいえ、事故発生の原因が主に加害者側にあるのですから、損害額のすべてを保険金で補ってもらいたいと思うのではないでしょうか?

そこで登場するのが、人身傷害保険です!
人身傷害保険では、加害者の賠償責任に関係なく保険金が支払われるため、加害者が賠償責任を負わない“被害者の過失部分”の損害についても保険金が支払われるのです。

※ただし、要注意です!!
どのようなケースでも、被害者の過失部分の損害が人身傷害保険で補われるわけではありません!

人身傷害保険から、被害者の過失部分に相当する損害について保険金が支払われるケースは、限定されています!

この点を理解しておかなければ、てっきり支払われると思っていた保険金が支払われないという事態になってしまいますので、注意してください。

この点は別の記事で詳しく解説したいと思いますので、本記事と併せてご覧ください。

まとめ

ここまでの内容を簡単にまとめましょう!

人身傷害保険の特徴は、人身事故の加害者が被害者に対して負う賠償責任の有無にかかわらず、保険金が支払われる点にある

人身傷害保険のメリットその1:保険金を早期に受け取れる

人身傷害保険のメリットその2:被害者自身の過失部分に相当する損害分についても保険金が支払われる

メリット2について、保険金が支払われるケースが限定されるため要注意!(別記事で詳しく解説予定です。)

事業所得者の休業損害

個人事業主や自営業者、開業医やホステスなどの自由業者など、給与所得以外の自身の経済的活動によって収益をあげている有職者のことを“事業所得者”といいます。

事業所得者が事故によるケガの影響で働けなくなると、売上げがストップしてしまい、これにともなって事業所得も伸び悩むという事態になるでしょう。
そうすると、事業所得者が事故のため休業した場合にも、もちろん休業損害が発生したといえそうですね。

ですが、事業所得者の休業損害”には、実はいろいろと難しい問題が潜んでいます

休業損害は一般に、「1日あたりの基礎収入×休業日数」という計算式をつかって算定されます。
会社員などの給与所得者であれば、1日あたりの基礎収入も休業日数も会社が作成してくれる“休業損害証明書”で簡単に把握することができます。
ところが、事業所得者となるとそうもいきません。

この記事では、事業所得者の“1日あたりの基礎収入”や“休業日数”はどのように把握されるのかといったことについて解説していきます。

事業所得者の休業損害に関する知識をつけて、不利益をゼロにできるようにしましょう!

休業損害=「1日あたりの基礎収入×休業日数」

休業損害とは、事故にあうことなく普段どおりに働いていれば得られていたであろう収入と実際に得た収入との差額のことを指します(差額説)。
そうすると、休業損害の金額を計算するためには、“事故にあわずいつもどおりに働いていれば得られていたであろう収入”を把握しなければならないこにとなります。

では、この“得られていたはずの収入”はどのように把握すればよいのでしょうか?

いうまでもないことかもしれませんが、休業期間中は実際に稼働していないのですから、働いていれば得られていたであろう収入を正確に把握することはできません。
そこで、過去の収入状況などを参考に、事故にあわずに働いていれば得られたはずの所得を予測するという手法をとることになります

次の項からは、過去の収入状況を把握する具体的な方法について説明していきます。

事業所得者の基礎収入

ここでは、事業所得者の基礎収入を把握するための基本的なルールを説明します。
基本となるルールをおさえたあと、ご自身で事業所得者の基礎収入を計算できるか試してみてください。

”確定申告書”等で所得を把握する!

事業所得者の所得は、所得税の確定申告書とこれに付属する書類(白色申告であれば収支内訳書、青色申告であれば所得税青色申告決算書)に基づいて把握するのが一般的です。

そこで、過去の収入状況を把握するために、事故前年の確定申告書等を参照することとなります。

確定申告書等のどこをみると1日あたりの基礎収入を把握できるのか、実際の確定申告書(青色)を例に検討してみましょう。

青色確定申告書(国税庁HPより引用)

この確定申告書から、どのようにして1日あたりの基礎収入を算定するのかわかりますか?

まず、「収入金額等」に分類されている「(事業)営業等㋐」欄の金額を使ってはいけない点に注意しましょう。

この金額は、事業を行ったことによる売上げ(収入)であり、我々が把握するべき“所得”は売上げから原価や経費を差し引いたものとなります。

それでは、「所得金額」に分類されている「(事業)営業等①」欄の金額が、この事業所得者の所得ということになるのでしょうか。

答えは、ノーです。

青色確定申告書のこの欄には、実際の所得から“青色申告特別控除額”が差し引かれた金額が記載されています

青色申告特別控除額とは、事業所得者等が取引を複式簿記により記帳し、これに基づいて作成した貸借対照表(BS)や損益計算書(PL)を確定申告書に添付して提出することなどによって得られる特典の一つで、課税対象となる所得金額から一定額が控除されることになります。
より詳しく知りたい方はこちら(国税庁HP)へどうぞ。

そこで、青色確定申告書から読み取れる事業所得者の所得は、事業所得に青色申告特別控除額を加えた金額ということになります。
青色申告特別控除額の金額は、青色確定申告書の「その他」-「青色申告特別控除額51」欄に記載されています。

所得に”固定経費”をプラスするケース

ここでの説明で、1日あたりの基礎収入は、事業所得(青色申告特別控除額を含む。)を365日で割って算出することをご理解していただけたと思います。
ここでは、1日あたりの基礎収入を算出するにあたり、事業所得に“固定経費”を加えた金額を加えるケースについて解説します。

固定経費とは、簡単にいうと、個人事業の営業をしてもしなくてもかかる経費のことです。
たとえば、テナントを借りて雑貨屋を営んでいるという場合、たとえ営業せずにいてもテナント料は発生しつづけますよね?このテナント料は固定経費にあたります。

このような固定経費については、実務上、事業を継続するのに必要かつ相当な範囲で基礎収入に含めるという考え方が一般的です。

先ほどのテナント料を例にすると、休業せずにテナントを利用して営業している場合、これに相応するテナント料も無駄にならずに済んだといえるのに対し、休業してテナントを利用してない場合には、テナント料は無益な経費といわざるをえないこととなります。
このような無用な経費は、事故により休業したことで発生したものですから、休業損害に含めるという考え方にも納得してもらえるのではないでしょうか。

では、固定経費の金額はどのようにして把握すればよいのでしょうか?
先ほどの青色確定申告書をもう一度みてください。

お分かりのとおり、確定申告書には、固定経費に関する記載がありません。確定申告書には、“売上げ(収入)”や“所得”は記載されていますが、経費については記載されていないのです。

そこで、確定申告書に付属する“青色申告決算書”をご覧ください。

青色申告決算書(国税庁HPより引用)

原価や事業を営むのにかかった経費などが細かく記載されていることが確認できると思います。
経費に分類される科目のうちどれが“固定経費”に該当する経費といえるのかしばしば問題となりますが、まずは「地代家賃」、「租税公課」、「損害保険料」、「減価償却費」をおさえておけば十分でしょう。

事業所得者の”寄与分”を考える

最後に、事業所得者の“寄与分”というお話をします。

皆さんにとっては聞きなれない言葉だと思いますが、寄与分とは、個人企業の利益のうち事業所得者の貢献度合いに応じた利益ということになります。

事業所得者のなかには、完全に自分ひとりで働いている方もいらっしゃいますが、家族や従業員の協力を得て営業活動をしている方もおられます。

前者の場合には、個人企業利益のすべてが事業所得者自身の営業活動によるものといえますから、その貢献度合いは100%となります。
他方で、従業員などの協力を得ているという場合、個人企業利益は事業所得者ひとりによる営業活動の成果とはいえないはずです。

このとき、事業所得者が事故の影響で休業したことによって発生した損害を部分的に把握するために、事業所得者の寄与分を把握する必要があるのです。

少し難しそうな話をしましたが、青色確定申告の場合には、家族等の協力者に支払われた給与全額が必要経費として売上げから控除されることとなるため、事業所得額(青色申告特別控除額を加えた額)をそのまま基礎収入を算出する際の基準額とすれば問題ありません
寄与分が問題となるのは白色確定申告の場合ですが、解説が煩雑となってしまいますので、ここでは割愛させていただきます。

事業所得者の基礎収入を計算する!

ここまでの内容をふまえ、実際に基礎収入を計算してみましょう!
以下に掲載する青色申告決算書を参考に、この事業所得者の1日あたりの基礎収入額を計算してみてください!

ただし、経費のうち「地代家賃」「租税公課」「損害保険料」「減価償却費」については事業を継続するために必要なものとします。

”申告外所得”と”赤字経営”の場合の処理

ここまで、事業所得者の基礎収入は、確定申告書とその付属書面で把握するという解説をしてきました。

ですが、確定申告書に記載された所得金額が実際の所得を表しているとは限りません

確定申告書の所得金額にもとづいて所得税が算出されることから、節税目的で経費を増やすなどして、所得金額を低くする記載する場合も散見されます。
このようなケースでは、実際の所得が確定申告書上の金額を上回るということになるため、確定申告をした所得の他にも所得があることを主張していくこととなります
これを“申告外所得”といい、そもそもこのような主張がみとめられるべきか、認められるとして、どのように基礎収入を算出するかについては別途検討する必要があります。
ここでは問題提起にとどめ、具体的な検討は別の記事にゆずることにします。

また、事業所得者の基礎収入については、赤字経営をしている場合についてもよく問題となります。

確定申告書上の所得金額に基づいて基礎収入を算出するという原則にしたがうと、所得ゼロ(赤字)ひいては基礎収入がゼロということになり、休業による損害はまったく発生しないという結論になってしまいます。
事故の被害にあって休業をしたにもかかわらず、休業損害がまったく認められないという結論でよいのでしょうか?
この問題についても、申告外所得と併せて別の記事で解説したいと思います。

事業所得者の休業日数

事業所得者の休業とは?

最初にご説明したとおり、事業所得者とは、個人事業主や自営業者、自由業者といった給与所得以外の自身の経済的活動によって収益をあげている有職者のことを指します。

誰かに雇われて、午前何時から午後何時までは会社のために働いてくださいといわれることも、毎週月曜日から金曜日までは出勤してくださいといわれることもありません。
ですから、(業態にはよりますが)事業所得者ご自身で働く日、時間を自由に決めることができます。

このように、事業所得者には所定労働時間といった概念がないため、何をもって“休業”というのかが問題となるのです。

実務上は、治療のために通院した日を休業日として処理する場合が多いように思います。

まとめ

ここまで解説してきた内容を簡単にまとめます!

事業所得者の基礎収入は事故前年の確定申告書などで把握する!

固定経費について、事業の継続に必要といえる場合には事業所得に加算する

白色申告の場合には、事業所得者の寄与分に注意する!
「休業日数」には、欠勤だけでなく”有給休暇”
も含まれる!

給与所得者の休業損害

交通事故にあってケガをしてしまったときには、入院や通院のため仕事を休まなければいけないことがありますよね。
この場合、欠勤した分だけ給料が減ったりしたことで生じる「休業損害」は、相手方に賠償請求することができます。

会社員の方であれば、お仕事を休むことで給料が減りますから、休業したことによる損害が生じていることは感覚的に分かると思います。

ですが、休業損害の請求に必要な書類の見方や損害の計算方法についてきちんと理解していないと、保険金が十分に支払われたのかどうか判断がつきません!

この記事では、会社員など給与所得者の休業損害について、賠償請求に必要となる書類休業損害の計算方法などについて解説していきます。

休業損害の休業損害に関する知識をつけ、不利益をゼロにできるようにしましょう!

休業損害証明書が必須!

休業損害を相手方保険会社に請求するためには、“休業損害証明書”を提出する必要があります。
休業損害証明書とは、休業損害額を計算するために必要な情報が記載された書類でです。就業先に作成してもらうものです。

加害者側の保険会社(対人賠償保険)から休業損害証明書のひな型を受け取り、就業先に提出するなどして作成してもらうことになります。

ここでは、実務上よく使われている休業損害証明書を掲載しておきます。

実務上よる使われる休業損害証明書

次の項からは、この休業損害証明書の記載にそって休業損害の計算方法を詳しく解説していきます。

休業損害=1日あたりの基礎収入×休業日数

いうまでもないことかもしれませんが、休業損害の賠償請求をするためには、損害額がいくらなのかがわからなくてはなりません。

休業損害とは、事故にあわずに働いていれば得られていた収入と実際に得た収入との差額のことを指します。

そうすると、休業損害の額を計算するためには、“事故にあわずいつもどおりに働いていれば得られていた収入”
を把握する必要があります。

この得られていたはずの収入を計算する式は、一般に
1日あたりの基礎収入×休業日数
とされています。

それでは「1日あたりの基礎収入」「休業日数」はどのように把握すればよいのでしょうか

ここからは、既に掲載した“休業損害証明書”の記載に沿って解説していきます。

1日あたりの基礎収入

事故直近3か月間の支給額÷90日

まず休業損害証明書の第5項をご覧ください。

休業損害証明書には事故直近3か月間の支給金額が記載されることになります。

「5.自動車事故による休業がない直近3か月間の月例給与(賞与は除く)は下表のとおり」との記載のとおり、事故の直近3か月間の給与を詳しく記載する欄が設けられています。

すでにお分かりだと思いますが、1日あたりの基礎収入は、事故の直近3か月間の給与をベースに算定されるのが原則となります。

実務上よく用いられる計算式は、
1日あたりの基礎収入
事故直近3か月間の支給金額÷90日
となります。

”わる数”は「90日」?

1日の基礎収入を算定するときによく使われる計算式は「事故直近3か月間の支給金額÷90日」である
とご紹介しました。

ですが、この計算式をみて疑問に思ったり、納得できなかったりする方もおられたのではないでしょうか?

この計算式では、事故直近3か月間の給与を3か月間の日数に相当する「90日」でわることになっています。
これは、皆さんが実際に働いた日数だけではなく、休日など実際には稼働していない日数も含んだ数字です。

稼働1日あたりの基礎収入を正確に計算するためには、「90日」という期間ではなく、「稼働日数」でわる必要があるともいえそうです。

この点については、別記事でより詳しく解説する予定です。

まずは、「1日あたりの基礎収入=事故直近3か月間の支給金額÷90日」をキチンと抑えておきましょう!

休業日数

休業障害証明書の書き方

次に、休業損害証明書の第1~3項をご覧ください。

この記載欄からも分かるとおり、休業期間、休業の種類ごとの日数を数字で記入し、「欠勤」「有給休暇」や「勤務先の所定休日」などの休業の種類を〇や◎などのマークで記入する形式となっています。

就労先に休業損害証明書を作成してもらったら、欠勤日数や有給休暇日数の数字が〇や◎の数と一致しているかどうか確認するようにしましょう

”有給休暇”も補償される!

休業日数に関し、知識として抑えておいてもらいたいのは、
「有給休暇(◎)」も休業による損害と評価され、賠償の対象になるということです。

先ほどもすこし触れましたが、休業損害とは“事故にあわずいつもどおりに働いていれば得られていた収入と実際に得た収入との差額”をさします。
素直に考えると、有給休暇を取得した場合には収入が減るわけではありませんから、休業損害の定義に当てはまらず、補償されないのではないか?という疑問がでてきますよね。

実際に、有給休暇とっても減収がないから休業損害として賠償請求することはできないと勘違いしている方が意外にも多くいらっしゃるようです。

ですが、有給休暇を取得した場合にも、休業損害として補償の対象になるという裁判例があり、実務上も確立されています

これはぜひとも知識として抑えておいてください!
有給休暇を取得して減収がない場合でも休業損害として請求できる!

まとめ

ここまで解説してきた内容を簡単にまとめます!

給与所得者が休業損害を請求するには「休業損害証明書」が必要!

実務上よる使われる休業損害証明書

休業損害の計算式は「1日あたりの基礎収入×休業日数」

「1日あたりの基礎収入」=事故直近3か月間の支給金額÷90日
※”わる数”は別記事で!

「休業日数」には、欠勤だけでなく”有給休暇”
も含まれる!

専業主婦(主夫)の休業損害~基礎収入特化編~

この記事では、主婦休損の額を求める計算式「基礎収入×休業日数」のうち、“基礎収入”だけを取り上げ、具体的な事例を紹介しながらより詳しく解説していきます。
主婦休損の基礎収入について、より深く正しく理解しましょう!

専業主婦の休業損害(”主婦休損”)について基本的な知識をみにつけたいという方は、「専業主婦(主夫)の休業損害」で解説しましたので、こちらをご参照ください。

それでは、主婦休損の”基礎収入”に関する知識をつけ、不利益をゼロにできるようにしましょう!

専業主婦(主夫)の”基礎収入”の考え方

原則は賃金センサスの女性労働者全年齢平均賃金

主婦休損を計算するとき、専業主婦(主夫)の基礎収入は、女性労働者の全年齢平均賃金とするのが原則です

この運用は、東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の「交通事故による逸失利益の算定方式についての共同提言」(三庁共同提言)に基づいており、実務上も定着しているといえます。

先ほど紹介した記事にも載せていますが、こちらでも賃金センサスの女性労働者全年齢平均賃金を表の形で載せておきます。

令和元年388万0000円
平成30年382万6300円
平成29年377万8200円
平成28年376万2300円
平成27年372万7100円
平成26年364万1200円

賃セの年齢別平均賃金を参考にする例外的なケースも!

ところが、なんにだって例外はつきものです!

基礎収入を女性労働者平均賃金とする原則にのっとらないケースがあることについては、東京地裁・大阪地裁・名古屋地裁の「交通事故による逸失利益の算定方式についての共同提言」(三庁共同提言)でも触れられています(判例タイムズ1014号、62頁~)。

以下、三庁共同提言を引用します。

 “(専業主婦の基礎収入は)原則として全年齢平均賃金によるが、年齢、家族構成、身体状況及び家事労働の内容等に照らし、生涯を通じて全年齢平均賃金に相当する労働を行い得る蓋然性が認められない特段の事情が存在する場合には、年齢別平均賃金を参照して適宜減額する

簡単にまとめると、
高齢であったり、他に家事をすることのできる家族が同居していたりするなど、専業主婦として提供できる家事の質・量が平均を下回るような事情がある場合には、女性労働者の平均賃金から減額しましょう!
ということですね。

専業主婦が提供できる家事の質・量が平均を下回るのであれば、女性労働者の全年齢平均賃金に見合うだけの経済的価値を生み出しているとはいえないこととなりますから、ご納得いただけると思います。

次項からは、専業主婦の基礎収入が減額されたケースをいくつか紹介したうえで、それぞれのケースを比較することで減額の理由がどのような点にあるのか考察してみます!

専業主婦の基礎収入が減額された事案

ケース①:65歳以上平均賃金の80%に減額された事案

事故の被害者が73歳の女性であり、記事を雑誌に寄稿するなどして稼働し、娘と家事を分担していたという事案。

裁判所は、賃金センサス女性学歴計65歳以上平均賃金80%を基礎収入とするのが相当と判断しました。

ケース②:70歳以上平均賃金の40%に減額された事案

事故の被害者が81歳の女性で、休職中の主婦である被害者の長女夫婦と同居し、同夫婦のため家事を補助していたという事案。

裁判所は、賃金センサス女性学歴計70歳以上平均賃金40%を基礎収入とするのが相当と判断しました。

ケース③:全年齢平均賃金の80%に減額された事案

事故の被害者が75歳の女性で、自身の子A、子Bとの3人暮らし。被害者と子Bは、自宅で仕事をすることの多い子Aの収入で生活しており、被害者は障害をもつ子Bの介護を担っている、という事案です。

裁判所は、賃金センサス女性労働者全年齢平均賃金80%を基礎収入とするのが相当と判断しました。

ケース①②③からわかる減額の理由

ケース①とケース②の比較でわかる減額のポイント

ケース①とケース②を比較する前提として、賃金センサスの女性学歴計年齢別平均賃金を表で示しておきます。

学歴計388万0000円
~19歳234万4400円
20~24歳306万4300円
25~29歳367万5400円
30~34歳387万1500円
35~39歳398万7400円
40~44歳419万4800円
45~49歳427万1500円
50~54歳430万3800円
55~59歳412万4100円
60~64歳335万3800円
65~69歳299万8500円
70歳~294万5600円

上の表からもわかるように、65歳以上の平均賃金は70歳以上の平均賃金よりも高額となっています。
これは、ご高齢の方は年齢を重ねれば重ねるほど筋力が衰えるなど、労働能力も低下するのが一般的と考えられることからも理解できますよね。

ケース①で65歳以上の平均賃金を参考とし、ケース②ではこれよりも平均賃金の低い70歳以上の平均賃金を参考としているのは、73歳の方と81歳の方が提供できる家事の質・量の差を基礎収入の金額に反映させるためと考えられそうです。

では、平均賃金からの減額の割合についてはどうでしょうか。
被害者が娘と家事を分担していたというケース①の減額率は20%、休職中の主婦である長女夫婦と同居し、同夫婦のため家事を補助していたというケース②では60%となっています。
ケース①では、娘と家事を分担していたというのですから、被害者自身も相当の家事をこなしていたのだと思われます。詳細は不明ですが、同居していた娘が朝から夕方まで働いており、その間の家事はすべて被害者が担っていたという事情があったのかもしれません。
一方のケース②では、被害者は休職中の主婦である長女夫婦と同居していたであり、ほとんど家事をする必要がなかったものと考えられます。このことは、家事を「補助」していたというワードからも窺えます。

このようにケース①とケース②の具体的な事情に目を向けてみると、被害者がどれくらい家事を担当していたかといえるかが、平均賃金からの減額割合に大きく影響しているように思われます。

ケース③と他のケースとの比較でわかる減額のポイント

ケース①とケース②を比較することで、どの年代の平均賃金を参考にするかについては被害者の年齢が、また、どの程度の割合で減額するかについては被害者の担っていた家事の量などが影響していることがわかりました。

では、被害者の年齢や家事の量といった情報から、形式的に平均賃金や減額割合を決定することができるのでしょうか?

答えは、ノーです

ケース③をみてみましょう。

被害者の年齢は75歳です。ケース①が73歳、ケース②が81歳ですから、被害者の年齢から形式的に平均賃金を決めるというのであれば、65歳以上の平均賃金あるいは70歳以上の平均賃金を参考にすることとなりそうです。

ですが、実際には、年代別ではなく全年齢平均賃金が参考とされています。上に掲げた年齢別平均賃の表を見ればわかるように、ケース①、ケース②よりも高い平均賃金を参考にしていることとなります。
これは、ケース③の被害者が75歳と高齢である一方で、自身の子Aの家事をするにとどまらず、障害を子Bの介護をも担っていたことから、平均的な高齢者が担うであろう家事労働を上回り、若い世代をも含めた全年齢平均賃金に匹敵する働きをしていると評価されたためでしょう。
他方で、全年齢平均賃金をベースとしながらも、被害者が高齢者であることをふまえて減額率を20%としたのですね。

このように、基礎収入の金額を決定する際に、どの年代の平均賃金をベースにおくか、平均賃金からどれくらいの割合で減額するかといった点は、被害者の年齢や家事の負担割合などから形式的に導かれるものではありません

確かに、これらの事情は基礎収入の決定に大きな影響をあたえる要素であることに間違いありませんが、被害者の個々の事情を個別具体的に検討して、適切な基礎収入額を認定しているのです。

まとめ

専業主婦の「基礎収入」に関する解説は以上となります。

知識としてストックしておいてもらいたいことは、
原則として賃金センサスの女性労働者全年齢平均賃金をつかい、平均的な労働を提供しつづけることが難しくなる事情がある場合には年齢別平均賃金をベースに減額を検討する。
ということだけです。

例外的な取り扱いについては、なんだかわかったようでわからないと思います。

そういうときのための弁護士です。まずは弁護士に相談してみるという姿勢もぜひ大切にしてください。

専業主婦の休損は、年収約380万円=日額約1万円として算出するのが原則

専業主婦が平均的な家事をすることができない事情があれば、基礎数乳が減額されることとなる

減額の割合は、個別具体的な事情を考慮して決める

専業主婦(主夫)の休業損害

交通事故でケガをしてしまった場合、入院や通院のために仕事を休まなければいけないときがありますよね。
この場合には、仕事を休んだことによる減収分を「休業損害」として加害者へ賠償請求することができます。

それでは、専業主婦(主夫を含みます。)の方が家事をすることができなかった場合はどうでしょう?
会社員の方であれば、お仕事を休むことで給料が減ったり、有給休暇を消費したりすることになりますから、休業損害が発生していることは感覚的にも分かると思います。
ですが、専業主婦には実収入がありませんから、家事を休んだとしても収入が減るということもありません。とすると、専業主婦には休業損害がまったく発生しないとも考えられそうです。

この記事では、専業主婦も休業損害を請求できること損害額の計算方法などについて説明していきます。

専業主婦の休業損害に関する知識をつけ、不利益をゼロにできるようにしましょう!

専業主婦(主夫)も休業損害を請求できる!

とても大切なことなので、結論から言います。

専業主婦(主夫)の方が事故の影響で家事をすることができなかった場合には、会社員などが仕事を休んだ場合と同様に、休業損害を請求することが可能です!

この知識がなかったために、主婦として家事に従事できなかったことで発生していたはずの休業損害の賠償を受けられなかったというケースが意外にも多発しているようです。

主婦(主夫)が家事をすることができなかった場合には休業損害を請求できる!
このことは、絶対に覚えておいてください。

主婦の休業損害は、略して「主婦(主夫)休損」と呼ばれているので、
主婦(主夫)休損は請求できる!、、、あまりにも大切なので、呼び方を変えて繰り返しお伝えしました。

裁判でも、交通事故による受傷のため家事労働に従事できなかった期間について、休業損害を請求することができるとされており(最判昭和50年7月8日)、現在では、この見解が判例上確定しているといえます。
主婦が家で家事をしてくれなければ、家族外の誰かに家事労働を依頼して報酬を支払うこととなります。主婦が家事を担ってくれているからこそ、報酬の支払いをせずにすんでいるといえるのですから、家事労働により一定の経済的価値が発生するという考え方には十分納得できると思います。

主婦休損の計算方法(専業主婦の場合)

ここまで読んでいただければ、主婦休損も事故によって発生した損害として相手方に賠償請求できるということについてご理解いただけたと思います。

では、主婦休損は結局いくらもらえるのでしょうか?

主婦休損の損害額が、どのようにして算出されるのかについて解説していきます。

休業損害は「基礎収入日額×休業日数」で計算する

休業損害を算出する計算式は、基本的に
基礎収入日額×休業日数です。

基礎収入とは、休業損害を算定する際の基礎となる収入のこと
休業日数とは働くことのできなかった日数のこと
をそれぞれ指しています。

次の項からは、専業主婦の基礎収入休業日数の考え方について解説していきます。

専業主婦(主夫)の基礎収入

専業主婦の基礎収入は、事故のあった年の女子労働者の全年齢平均賃金とする運用が実務上定着しているといえます。

これは、東京地裁(地方裁判所の略)・大阪地裁・名古屋地裁が、平成11年に発表した「交通事故による逸失利益の算定方式についての共同提言」(三庁共同提言)で発表した内容にもとづいています(判例タイムズ1014号、62頁~)。

そして、女子労働者の全年齢平均賃金は、賃金センサス(「賃金構造基本統計調査」、いわゆる“賃セ”)の結果がまとめられた表に記載されています。以下に、各年における女性労働者の全年齢平均賃金額(産業計、企業規模計、学歴計)をまとめておきます。

令和元年388万0100円
平成30年382万6300円
平成29年377万8200円
平成28年376万2300円
平成27年372万7100円
平成26年364万1200円

ここでは、専業主婦(主夫)の基礎収入は、賃セにおける女性労働者の全年齢平均賃金とだけ覚えておいてください。
※主婦休損を計算するときには、基礎収入の日額を算出する必要があるので、平均賃金を365日(閏年の場合は366日)で割った金額となります。

ただし、なんにだって例外はつきものです!実は、主婦(主夫)の方がとても高齢で、十分な家事労働をすることができない場合などには、基礎収入額を賃セの平均賃金から減額して割り出す必要があります。
こちらについては、裁判例などを挙げて別の記事で取り上げたいと思います。

専業主婦(主夫)の休業日数

次に、専業主婦の休業日数について解説します。

会社にお勤めの方が事故のケガのため仕事を休んだという場合には、会社の協力を得て欠勤日数や有給休暇取得日数を把握することは簡単です。
ですが、専業主婦の場合となると、いつ、どれくらい家事に従事できなかったのかについて明らかにすることはとても難しくなります。
専業主婦の休業日数をどのように算定するかという点について、実務上よく用いられる方法の1つをご紹介します。

まず、休業損害の算定対象となる期間(家事を休業した期間)は、事故日から症状固定日(それ以上治療しても症状が改善されなくなったとき)までとされています。

ですが、主婦休損を「基礎収入日額×休業期間」で算出することはしません。
これは、休業期間中にまったく家事をすることができないかというと、そうではないためです。時間の経過とともに症状が少しずつ改善することにともない、徐々に家事ができるようになっていくというのが一般的ですよね?

そこで、どれくらいの期間、どれくらい家事を休まなければならなかったのかを、症状の改善度合いに応じて割合的に算出する方法がとられます。
これを、“期間逓減方式”といいます。

下の図をご覧ください。
これは、ある専業主婦の方が交通事故にあい、事故から30日間は入院していたため家事に従事できず、退院後60日間は松葉づえを使わなければ歩けなかったため家事の80%が、その後松葉づえを使わずに歩けるようになったものの首や腰の痛みから家事の40%が制限され、事故から180日後に症状固定にいたったという事案を想定しています。

専業主婦の休業日数を算出する期間逓減方式のイメージ図です。

この事案における休業日数を計算すると、以下のようになります。
(30日×100%)+(60日×80%)+(90日×40%)
=114日
つまり、180日間の治療期間のうち、114日分が休業日数とされることになるのです。

主婦休損の金額を計算する 

ここまで、専業主婦の基礎収入や休業日数の考え方について解説してきました。早速、先ほどの事例をについて主婦休損を計算してみましょう。

<計算式>
基礎収入日額×休業日数
=(388万0100円÷365日)×{(30日×100%)+(60日×80%)+(90日×40%)}
=1万0630円×114日
=121万1820円

まとめ

ここまで解説してきた内容をまとめます!
【!注意!】今回は専業主婦の休業損害について詳しく解説しましたが、兼業主婦の場合には他にも検討しなければならないことがあります。
兼業主婦の休業損害については、別の記事で解説しますので、ご参照ください。

専業主婦の方が事故でケガをして家事をすることができなかった場合には、休業損害の賠償請求ができる!

専業主婦の休損は、年収約380万円=日額約1万円として算出する

休業日数は、症状の改善度に応じて家事が制限された割合を算出し、制限された期間をかけ合わせる=期間逓減方式

一括対応の”ウチキリ”とは!?

 皆さんは、交通事故で負ったケガを治療するためにかかる費用のすべてを加害者側の保険会社が支払ってくれるものだと思ってはいませんか?
 それは、勘違いです!!
 事故から一定期間がたつと、保険会社から「一括対応を打ち切ります。」という連絡がはいります。このとき、「一括対応のウチキリってなに!?」「もう治療をうけられないの?」などと慌てずにすむよう、”一括対応のウチキリ”についてきちんと理解しておきましょう。

 この記事では、一括対応のウチキリの意味などについて、説明していきます
※「一括対応」の意味について知りたい方は、一括対応のメリット・デメリットをご参照ください。

一括対応の”ウチキリ”とは?

 一括対応とは、加害者の加入する任意保険会社が、自賠責保険の対応も一括して行うサービスのことをいいます。交通事故の被害にあわれた方が病院へ通うとき、加害者の保険会社が治療費を病院へ直接支払ってくれるのも、この「一括対応」の一環です。

そして、 一括対応の“ウチキリ”とは、その言葉のイメージどおり、一括対応を終了することを意味しています。

 それでは、一括対応が打ち切られることで、皆さんは、どのような影響をうけるのでしょうか。
結論からいえば、一括対応を打ち切られると、任意保険会社が治療費を支払ってくれなくなります。つまり、皆さんが、一括対応を打ち切られた後も治療したい場合には、とりあえず、自腹で通院しなければならないことになります。
 事故の影響で痛みがあっても、経済的な余裕がないなどの理由から、自腹での治療を断念せざるを得ないという方もたくさんいらっしゃることでしょう

 このように、一括対応の“ウチキリ”をされるかどうかは、皆さんが事故でおったケガの治療を続けられるかどうかにも大きく影響しているのです

一括対応”ウチキリ”の時期と判断のポイント

 では、保険会社は、いつ、どのような判断にもとづいて、一括対応を打ち切っているのでしょうか。
※私が、加害者側の保険会社の担当者としたやりとりから推測される内容も含みます。

 まず、保険会社は、患者の症状が“コテイ”したと判断できる場合に、一括対応を打ち切っているようです。 ここでいう症状の“コテイ”とは、首や腰の痛み、手足のしびれといった事故に起因する症状が、それ以上治療しても良くならない状態のことをいいます。つまり、何らかの症状は残っているけど、治療したところで改善しない症状なのであれば、治療をつづける必要はないだろうということです。

 そして、症状固定となったかどうか(すなわち、一括対応を打ち切るかどうか)の判断は、事故の発生状況や診断書に記載された傷病の内容、通院の頻度などを総合的に考慮してなされています。

 これだけ聞くと、まぁそんなものかと思われるかもしれません。

ですが!!
ここでは、
 ① 症状固定と判断するのは誰か?
 ② 症状固定の判断の根拠は?
という点に注意しなくてはいけません。

 本来であれば、症状固定とは医学的な判断ですから、その判断は、患者の担当医によってなされるべきです。これは、医学の専門知識を有しており、患者の症状を定期的に診察しているのが担当医なのですから、言うまでもありません。

 しかしながら、保険会社は、患者の担当医の見解を問うことなく、事故の状況や物損額、診断書に記載された傷病名などから、類型的に症状固定時期を判断することもあります。

 もちろん、保険会社には医療部門があり、医学的な知識をもちあわせた専門家が診断書等の記載から患者の症状が固定時期にいたったと合理的に判断するケースも多々あります。
ですが、このような適切もされないまま、事故状況や事故直後の症状などから類型的に判断されてしまうケースもあるのです。皆さんは、類型的な対応をされてしまわぬよう、注意しなければなりません。

 弁護士にご依頼いただいた後で、一括対応ウチキリの連絡がある場合には、保険会社に対して、「担当医の見解を聞いてから判断しましょう。」(これを医療照会といいます。)と提案することになります。

 このような対応をすることで、一括対応の時期を遅らせてくれるケースもありますが、保険会社内での決定事項だとして打ち切られてしまうことも多々あります。
 これは、一括対応が保険会社のサービスであるが故の帰結であり、たいへん歯がゆい思いもありますが、我々弁護士の力の限界でもあるように思います。

一括対応の”ウチキリ”後の治療はできない!?

 ここまで読んでくださった方には、一括対応のウチキリの意味やタイミングについてご理解いただけたと思います。
 この項でお伝えしたいことは、「一括対応のウチキリは、治療継続を禁止するものではない」ということです。

 事故に遭われた方の中には、保険会社から一括対応を打ち切られたので3か月しか通院できなかったとあとになって相談される方がおられます。
 ご自身の経済的な理由によるものであれば仕方ないのかもしれませんが、一括対応のウチキリが治療の強制終了だと勘違いされているケースも散見されます。
 一括対応のウチキリによって、保険会社が病院に治療費を直接支払ってくれなくなるというだけで、治療そのものを否定するものではありませんので、十分に注意してください
 一括対応の打ち切り後に自費で通院した分の医療費は、残存する症状が後遺障害等級に該当すると自賠責保険で認定された場合には、保険会社から回収することができます。
 後遺障害等級の該当性の判断などについては、別の記事で取り上げたいとおもいます。

まとめ

□一括対応を打ち切られても治療を続けることはできる!

□一括対応の打ち切りにより、保険会社が治療費を病院などへ直接支払ってくれなくなるので、打ち切り後の治療は自費となる。
 ただし、残存する症状が後遺障害等級に該当すると認定された場合には、自費通院分も保険会社から回収できるのが一般的。

□保険会社の独断で一括対応を打ち切られてしまうこともあるので、早め早めの相談を!

保険金を支払ってくれるのは誰!?

この記事では、交通事故の被害者に保険金を支払うのが誰なのか?を説明します。加害者の加入する自動車保険の他にも、自賠責保険や人身傷害保険という保険もあります。
保険制度は意外にも複雑ですので、一度整理しておきましょう。

3つの自動車保険

知っておいてもらいたいのは、交通事故で登場する保険には、
①自賠責保険
②任意保険
③人身傷害保険(「ジンショウ」と略されます。)
の3つが存在するということです。
まずは、自賠責保険と任意保険の役割をキチンと理解することが大切です。

自賠責保険とは

みなさんも、自動車を購入したときに、「自賠責保険への加入が必要です」と販売員から説明をうけたことがありますよね。
では、自賠責保険とはいったい何なのでしょう。

自賠責保険の全体像

自賠責保険とは、車の所有者に加入が義務付けられている自動車保険です。
加入者が事故を起こしたときに、加入者に代わって補償金を支払ってくれます。

ただし、その補償範囲は、人的損害に限られます。
つまり、事故で負ったケガや、ケガにより働けなくなった場合に生じる損害などのみ補償され、自動車の修理にかかる費用については、補償されません。

また、補償の金額には、上限が設けられています。傷害について120万円、後遺障害の程度に応じて増額、死亡だと3000万円となっています。

みなさんも、交通事故被害にあったときに補償金を支払うよう自賠責保険に請求することが可能です。

自賠責保険は強制加入の自動車保険

車の所有者は、必ず自賠責保険に加入しなければなりません。
なぜ、自賠責保険への加入が義務付けられているのか。ズバリ「車は凶器になる」からです。車の運転には、人に危害を加える危険性が潜んでいるのです。

交通事故の加害者は、被害者に賠償金を支払う義務を負います。
このとき、「私にはお金がありませんので、賠償金を一銭も払えません」などと加害者から言われたら、みなさんはどう感じるでしょう。
もちろん、被害者が受けた不利益の全てをお金で埋め合わせることなどできるはずがありません。ですが、お金を支払ってもらうという形でしか補填されない損害もある、というのが現実だと思うのです。
それにもかかわらず、一銭すら支払われない…こんな残酷な結末に、誰が納得できるでしょう。

そこで、加害者に資力がないため被害者の不利益が補填されないという最悪の事態を回避するため、車の所有者に自賠責保険への加入を強制し、最低限の補填がなされるようにしたのです。

補償の範囲は「人的損害」のみ

自賠責保険の補償範囲は、人的損害のみとなります。
裏を返せば、物的損害については、自賠責保険の補償が及ばないということになります。

人的損害とは、ケガの治療や通院にかかった費用、欠勤等による減給、事故でケガを負ったことによる精神的苦痛などをさします。
この他にも、後遺障害が残存した場合に考慮すべき損害等も存在しますので、損害費目を詳しく知りたい方は「損害費目の種類と過失割合~示談金提示額の見方」をご覧ください。

自賠責保険の補償金額

注意していただきたいのは、「傷害だと120万円、後遺障害の程度に応じて増額、死亡だと3000万円」というは、あくまで上限であるという点です。
つまり、事故に遭えば必ずこの金額が支払われる、のではないということです。

法律相談に来られる方の中には、自賠責保険に請求すれば120万円が確実に支払われると勘違いされている方も時々おられます。
しかしながら、実際に受けた損害を超える保険金が自賠責保険から支払われるということはありません。

例えば、事故の被害者に幸いにも後遺障害が残らなかった事案において、実際の損害額が50万円であれば、120万円ではなく50万円が支払われるにとどまります。また、実際の損害額が150万円であっても、自賠責保険から支払われる保険金は120万円だけということになります。

自賠責保険のまとめ

□ 自賠責保険は、被害者の損害を最低限埋め合わせる保険といえる
□ 対象範囲は、人的損害のみであり、自動車の故障などの物損には及ばない
□ 自賠責の上限額の範囲内で、実際の生じている損害相当額が支払われるにとどまる

任意保険とは

みなさんも、交通事故に関するニュースなどで「加害者は任意保険に加入しておりませんでした」というフレーズを耳にしたことがあるのではないでしょうか?任意保険とは何なのでしょうか。

任意保険の意味

任意保険とは、交通事故の加害者が契約している保険のことをさします。
既に説明した自賠責保険とは違い、加入することを強制されない自動車保険であることから「任意」保険と呼ばれています。

任意保険の役割

みなさんが事故にあった場合、任意保険会社の担当者とのやり取りがほとんどでしょう。
それもそのはず。事故被害者の治療費や通院交通費、休業損害などについて、基本的には任意保険会社が対応してくれます。
もっとも、このように事故被害者の利益に資する対応をしてくれる任意保険ですが、気をつけなければならないことも山ほどあります!

任意保険の立場

任意保険と付き合っていくうえで予め知っておかなければならないのは、任意保険(の担当者)が自社の利益も考慮しなければならないということです。
※なお、このような態度を批判するものでは全くありません。会社は利潤を追求する組織ですから、出ていくお金(補償金)が少ない方がよいのは当然です。

特に知っておいてもらいたいのは、任意保険会社による一括対応という仕組みです。この仕組みを知っておくことで、任意保険会社から示談金の提示を受けた際に、勘違いして低い金額で示談することを回避できるようになると思います。

まとめ

いかがでしょう。自賠責保険と任意保険について、基本的なところを抑えることはできたでしょうか?
自賠責保険は、人的損害についてだけ、上限額の範囲内で保険金を支払ってくれます。
任意保険会社は、全員が加入している保険ではないけれども、加入している場合には、治療費や通院交通費の面倒をみてくれます。
自賠責保険の上限額や任意保険の一括対応については、別の記事にまとめたいと思っています。

“一括対応”のメリット・デメリット

交通事故の被害にあってしまった場合に、誰から保険金の支払いを受けられるのかについて、「保険金を支払ってくれるのは誰!?」で説明しています。
簡単におさらいすると、「交通事故の被害者は、自賠責保険と任意保険の2つの保険に保険金の支払いを請求できる。しかし、任意保険会社により”一括対応”がなされるのが一般的であるため、弁護士に依頼しない限り自賠責保険に賠償請求することは無い。」という内容です。

この記事では、「一括対応」とは何か?について説明します。
一括対応のメリットとデメリットを知っておかないと、適切な額の保険金を受け取ることができませんから、ぜひ最後まで読んでもらいたいと思います。

一括対応の内容

原則的な保険金支払いの流れ

治療費や慰謝料といった賠償金を支払ってくれる保険には、“自賠責保険”と“任意保険(加害者の加入する自動車保険)”の2つがあります。
諸説ありますが、自賠責保険が最低補償をし、不足する部分を任意保険が補足するといわれたりします。
そして、事故でケガをした方が保険金を受け取るまでの流れは、
①まず自賠責保険に対して保険金の支払いを請求して、
②不足する損害額について任意保険会社に請求する
というものが原則的であるといえます。

原則的な流れによる不都合

しかし、このような原則的な流れ従うと、事故被害者にとっては不都合です。
なぜならば、自費で通院する必要があるからです。
当然、最終的には自賠責保険から治療費を返してもらえますが、一旦は立て替えなければならないのです。このせいで、出費が大きくなってしまったり、領収書を保管して通院終了後に自賠責に請求書を送付しなければならなかったりと、かなり大変です。

そこで、このような不都合を解消するために打ち出されたのが「一括対応」という仕組みです。

つまり、一括対応とは、本来全ての治療を終えてから自賠責保険に保険金を請求したうえで、不足額を任意保険会社に請求するところを、 任意保険会社が保険金の全てを支払うサービスといえます。

一括対応の流れ

まず、任意保険会社から同意書が送られてきます。この同意書は、任意保険が、被害者の通院先である病院から必要資料を取得するために必要なものです。
これに同意しなければ一括対応がなされませんので、提出してください。

その後は、医師の指示に従って通院を継続するのみです。
診察やリハビリを受けても、自分の財布から代金を支払う必要はありません。

任意保険会社は、被害者に後遺障害の残る可能性があると判断した場合、被害者の症状が後遺障害等級に該当するか否かの判断を、損害保険料率算出機構という機関に求めます。これを「事前認定」といいます。

その後、任意保険会社から示談金の提示がなされます。

被害者がこれを承諾して示談が成立すると、任意保険会社から示談金が入金されます。これをもって一連の手続きは終了となります。

なお、任意保険会社は、その後に、自賠責保険に対して、本来自賠責保険が被害者に支払うべきであった保険金額を請求することになります。
これを「求償」といいます。

一括対応の落とし穴

このように、一括対応は、交通事故の被害者がお金を気にすることなく治療を受けられるようにしたり、煩わしい手続きをしなくて済むようにしたりするために始まった有意義な制度です。
しかしその一方で、いくつかの落とし穴があります。

落とし穴①:示談金が低くなる

弁護士に相談しないまま示談をした事故被害者の中には、我々弁護士の想定する金額よりもかなり低い金額で示談してしまっている方が少なくありません。
その原因の一つに、任意保険会社だけが窓口となる”一括対応”によって、保険金は「自賠責保険」と「任意保険」の2つの保険から支払ってもらえるという認識が被害者の中から消え去られてしまっているという点があります。

以前、このような相談を受けたことがあります。
「保険会社から示談金を提示されたのですが、妥当な金額なのかどうか全くわからないので、見てみてもらえませんか?保険会社の担当者にもこれ以上支払われることはないのかと質問してみたのですが、『自賠責の基準で算出した金額とかわらないので問題ないでしょう。』と言われるだけでしたので…」
そうして任意保険会社の提示した金額を拝見したところ、やはり担当者のいうとおり、ほぼ「自賠責の基準で算出した金額」と同額でした。

この事例で注目してもらいたいのは、任意保険会社が、自賠責基準で算出した金額をベースとしている点です。

自賠責基準(自賠責保険から支払われる保険金を算定する計算式)にしたがって算出される保険金は、必ずしも事故被害者の損害を埋め合わせるのに十分な金額とはいえません
自賠責保険の基本的な考え方は、事故被害者の損害を最低限で補償するというものですから(※諸説あります。)、自賠責基準により十分な損害補填をできるような金額が算出されることは、まずないといってよいのです。

事例の任意保険会社が、自賠責基準により算出した金額とそう変わらない示談金を提示したのは、任意保険会社から被害者に支払う保険金額を自賠責保険の上限額にとどめ、保険金の支出を抑えるためであったと思われます。
(妥当な損害額が偶然にも自賠責保険の上限額におさまるという事例も当然ありますが、今回のケースは全く当てはまりませんでした。)

相談者が、「保険金は自賠責保険と任意保険から支払われる。」「自賠責保険の保険金は必ずしも十分といえない。」という認識をしっかりと持てていれば、任意保険会社から提示された示談金が、自賠責基準で算出した金額とほぼ同額であるという点にすぐに違和感をいだけるはずです。
また、紹介した事例にでてきた保険会社のように、自社からの保険金の支出を抑えようと、示談金の提示額を自賠責保険の上限額内にとどめられる場合もあることを知っておいてください。

妥当な保険金の支払を受けるためには、事故で発生した損害がいくらに相当するのか?を知っておかなければなりません。
ただし、その正確な算出には専門的な知識が必要です。任意保険会社から示談金の提示がなされた段階で、弁護士に相談してみてくださいね!

落とし穴②:事前認定による等級審査

次に、一定期間治療をしたのに残ってしまった痺れなどの症状について、後遺障害等級に該当するか否かの判断が、「事前認定」という方法によってなされてしまう点です。

「事前認定」による場合、後遺障害等級に該当すると判断されにくくなると一般にいわれています。
そうすると、手足の痺れなどの症状が残っているにもかかわらず、後遺障害として適切に評価されず、支払われる保険金も低くなってしまうおそれがあります。

落とし穴③:一括対応の一方的な終了

一括対応はあくまでもサービスにすぎません。
これは、任意保険会社が被害者の同意を得なくても、一括対応を一方的に終了させられることを意味します。
この一括対応の終了は、「打切り」(ウチキリ)と呼ばれます。

ウチキリは、一括対応の終了のことであり、治療を終了しなければならないわけではありません。ですが、任意保険会社が治療費を支払ってくれる期間が終了するわけですから、ウチキリ後の治療は自費で受けることとなり、出費がかさんでしまいます。

まとめ

”一括対応”のメリットとデメリットについて理解してもらえたでしょうか?
任意保険会社が治療費などを支払ってくれるので、被害者にとっては、立て替えの必要がなく経済的に助かるというメリットがあります。
他方で、任意保険会社だけが窓口となるため、自賠責保険の認識が薄れ、不十分な保険金で示談をしてしまうなどのリスクも潜んでいます。

一括対応が”諸刃の剣”ともいえる保険の仕組みであることを十分に理解して、うまく活用できるようにしましょうね!

弁護士には早期に相談すべき

質問です。
皆さんは、もしも自分が交通事故の被害にあったら、どの時点で弁護士に相談しようとお考えになるでしょうか?
(参照記事:事故にあってから示談までの流れ

この記事では、どのタイミングで弁護士に相談するのが最適なのか?という点について考えてみます。

弁護士の出番は交渉だけ⁈

私の講演に参加された方々に同じ質問をなげかけると、「交渉」とお答えになる方が圧倒的に多いです。
その理由としては、相手方保険会社とどのように交渉すれば良いのか分からないというものが多数です。

確かに、治療については、通院さえすれば担当医や理学療法士がリハビリの指導をしてくれますし、後遺障害診断書についても、しかるべき期間が経過すれば担当医の方から「後遺障害診断書を書いてあげるからひな形をもってきなよ」などと申し向けてくれます。また、後遺障害等級の審査についても、みなさんが審査の申請をしない場合には、任意保険会社が事前認定という手続きをすることで実施されます。
 このようにみてみると、交通事故の被害者が積極的に関与する必要があるのは交渉段階になってからであるというのも、一面において真実であるように思われます。

 しかしながら、治療や後遺障害診断書の作成、後遺障害等級の審査申請などにおいて、“しておくべきこと”をキチンとしておかなければ、適切な賠償をしてもらえません。

事例で学ぶ相談のタイミング

 以下では、弁護士に相談する時期が遅かったために、妥当な金額で和解するまでに相当の苦労を要した事案を説明します。
 いずれの事案も、最終的には妥当な解決をすることができましたが、あくまでも結果論にすぎません。早期に弁護士に相談していれば、時間的、費用的な負担をもっと減らせたはずです。
 これらの事例を通じて、妥当な後遺障害等級を獲得するための方法として早い段階で弁護士に相談するべきであるとの認識をお持ちいただけると幸いです。

事例1:事故後1ヶ月で相談された事例

 ある日、こんな相談の電話が私のところへかかってきました。
「1ヶ月程前、赤信号のため停車しているところに追突される事故にあいました。病院には既に通院していて、仕事も休んでいます。交通事故にあうのは初めてのことで、今後の流れについて伺いたく、お電話しました。」
 よくある一般的な相談内容でしたので、来所してもらってから周辺事情を詳しく聴こうと考えました。
 電話をくださった方に事務所へお越しいただき、事故からこれまでの状況などを尋ねていくと、事故後初めて病院に行ったのは、事故から2週間後であったことが分かりました。
どうやら、1年以上も前から計画していた海外での家族旅行をキャンセルする訳にはいかなかったようです。

 この事例における最大の問題点は、初診日が事故後2週間経過後であるという点にあります。
 初診日が事故発生日から離れている場合、妥当な後遺障害等級を獲得することが、かなり難しくなってしまいます。
 これは、事故によるケガの症状が重い人は、すぐ病院へいくはずだという考えに基づいており、この考えは一般的に受け入れられているといえるでしょう。

 この問題に対処するため、後遺障害等級の審査を申請する際、初診日が事故後約2週間後となってしまった理由について詳細に記載した書面を添付しました。その結果、初診が遅れたことの影響もなく、妥当な後遺障害等級を得ることができました。
 もっとも、これはある程度合理的ともいえる理由があった事例です。どんな理由でも説明すれば足りるというものではありません。

 この事例の相談者が事故にあった日に電話をしてくれていれば、何としても旅行へ行ってしまう前に一度病院へ行くようにアドバイスできたはずです。
 また、旅行から帰ってきた後に事故による症状を詳細に説明できるよう、旅行している時点での症状を日記のように記録してもらい、その書面を自賠責に必要書類と一緒に提出するということもできたはずです。

この事例からは、
事故にあったら直ぐに病院へいくべきである点
仮に行けないとしても弁護士にその後の対処法をきいておくべきである点
を教訓として学んでいただきたいと思います。

事例2:後遺障害診断書が作成済みの事例

 法律相談へこられる方というのは、何かしらの紛争に巻き込まれて八方塞がりの状態にありますから、ただならぬ雰囲気を漂わせながら事務所へこられる場合がほとんどです。
 しかしながら、このときの相談者は、むしろ意気揚々といった様子でした。といいますのも、我々弁護士に手間をとらせまいと、後遺障害等級の審査の申請に必要な書類を全て集めたから申請だけしてくれれば良い、というのです。
 ですが、後日お持ちいただいた必要書類を拝見させていただいたところ、後遺障害診断書の記載が、妥当な後遺障害等級を獲得できるような内容ではありませんでした。

 後遺障害等級該当性の判断は、提出書類に記載された情報のみによってなされる書面審査の方式をとります。
 ですから、妥当な後遺障害等級を獲得するためには、医学的所見の記載された書面の記載内容がとても重要です
 なかでも“後遺障害診断書”は特に重要です。この書面には、自覚症状や他覚的所見(可動域制限や切傷の跡の大きさ等)といった情報が記載されており、等級該当性の判断をする機関が最も気にする書面といえます。

 この事例における最大の問題点は、相談者がご自身で後遺障害診断書の作成を医師に依頼してしまった点です。
 この問題への対処として、後遺障害診断書を作成された担当医に記載内容の訂正を求める活動をしました。
 元々の表現を若干変えるにとどまり、医学的判断を変えるような訂正ではないことや、後遺障害診断書作成後間もない修正依頼だったこと等もあり、快く修正依頼に応じてくださいました。
 その成果もあってか、無事に妥当な後遺障害等級を獲得することができました。

 事例紹介の記載からもお分かりのとおり、後遺障害等級の審査は診断書の「表現」によっても左右されるような極めて繊細な作業といえます。
 依頼者がもう少し早く弁護士に相談しておられたら、後遺障害診断書の作成に先立ち、妥当な後遺障害等級を獲得するために必要な後遺障害診断書の形を医師にお伝えすることができたはずです。

まとめ

 弁護士への相談は、できるだけ早い方が良いです。事故に遭った直後や遅くとも事故後1〜2ヶ月くらの時期には、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

 初回相談を無料としている法律事務所が多いですし、ご相談の時点で弁護士が介入する必要のない事案でも、今後の方針などについて適切なアドバイスをもらうことができます。

交通事故から示談まで

交通事故の被害にあわれた方にとって、
・この後どういう手続きが進んでいくのか?
・自分がしなければいけないことは?
・事故のあと、どれくらいの期間で示談できる?
といった点は、とても気になるところでしょう。

 そこで、この記事では、”交通事故にあってから示談するまでの手続きの流れ”を簡単に説明します。
 あなた自身が、事故から示談に至る過程の中のどこに位置しているのかを正確に知ってください。そうすれば、「この後私はどうなるのか?」とか「保険会社は、いったいいつまで私を放置しておく気か!?」といった、疑問や不満も解消されることでしょう。

交通事故の被害にあった直後

 みなさんは、交通事故にあった直後にしなければならないコトをきちんと覚えていますか?教習所では、かならず教えられていると思いますが、おさらいしておきましょう!

□ 交通事故が発生したことを警察に報告する
 ※ 法律上の義務です(道路交通法72条1項)。

事故の相手の
 ・氏名、住所、電話番号
 ・自動車の登録番号
 ・加入している保険会社、契約者名、契約番号
 ・自賠責保険の保険会社、契約者名、契約番号
 などを確認する。
※ナンバープレートや免許証、保険証をスマホのカメラで撮影しておくとよいでしょう。

自分の加入している自動車保険会社に報告する 

ざっと、こんなところでしょうか。
他にも、事故の状況を資料として残しておくため、携帯のカメラなどで、事故現場の様子や事故車両、ケガの状況などを撮影しておくといった「証拠保全活動」も必要ではありますが、別の記事で詳しく書こうと思います。

治療を受ける

交通事故の被害にあったら、すぐに病院で診察を受けましょう。治療費は、基本的に任意保険会社が支払ってくれます。


 −注意⚠−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 猛スピードで走る車同士の正面衝突といった衝撃が非常に大きい交通事故では、脳挫傷による意識障害や骨折、靭帯断裂など、一見して明らかな傷害を負うケースがほとんどです。
 こういった事案で、被害者の方々は躊躇することなく直ぐに病院へ行かれることでしょう。しかしながら、外見からは確認することのできない怪我をした場合はどうでしょうか。
 「違和感はあるけど時間が経てばきっと治るだろう…」などと考え、病院へ行かない方が大変多くいらっしゃいます。また、「自分が事故で怪我をしたとなれば、相手に迷惑がかかってしまうのではないか。事故直後に誤ってくれたし…」などと事故の加害者への配慮として、病院で診察を受けないという方々もいらっしゃいます。

どうか、お願いです。
「きっと治るだろう。」と安易に考えたり、「相手がかわいそうだから。」等と読まなくて良い空気を読んだりせずに、ご自身の身体のことを第一に考え、とにかく病院へいってください。
 事故後すぐに病院へ行かなかったために不利益を被った方々を目の当たりにしてきた私からのお願いです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

治療に要する期間は、事故で負った怪我の種類や程度によります。
 ですが、事故でおったケガの治療のめなら何年でも治療費を支払ってくれるワケではありません。
 任意保険会社は、事故後1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、5ヶ月という節目の時期になると、「そろそろ打切りのじきですね」と言ってくるでしょう。そして、6ヶ月を経過すると、ほぼほぼ(半ば強制的に)打ち切ってくることもあります。

症状固定と後遺障害

□ 「症状固定(ショウジョウコテイ)」の意味を知ろう
  事故でケガをした被害者の方は、病院で定期的な診察を受けるとともに、リハビリをしていくのが一般的です。 ただし、リハビリをすれば完全に治癒するかといえば、全くそうではありません。
 一定の改善がみられた後、症状がそれ以上に良くも悪くもならないといった現象が起こります。 これを「症状固定」といいます。

□ 医師に「後遺障害診断書」を作成してもらう
 医師から症状固定だね等といわれたら、後遺障害診断書の作成をお願いしましょう。症状固定の時点で残存している症状が医学的な「後遺障害」ということになります。
 後遺障害診断書は、後遺障害等級の審査を求めるのに欠かすことのできない重要資料ですから、必ず作成してもらいましょう。

□ 後遺障害”等級”を認定してもらう
  次に、自賠責保険(正確には、損害保険料率算出機構)に、医者が後遺障害と判断した症状が「後遺障害等級」に該当するか否かの審査をしてもらいます。
これに該当すると判断されなければ、任意保険会社から後遺障害に関する損害の賠償金を支払ってもらうことは極めて困難になります。

 ここで、おやっ?と思った方もおられるでしょう。
 医師が後遺障害診断書を作成した、つまり残存する症状は既に後遺障害であると医師が認めているのだから、今さら何を判断するのか?と…
  しかし、要注意です!
  医師が後遺障害であると診断したからといって、その後遺障害に関する損害(後遺障害逸失利益と後遺障害慰謝料など)の賠償を受けられるものではありません!!
 損害賠償の対象となる後遺障害であるかどうか、言い換えると、後遺障害“等級”に該当するかどうかの判断は、医師ではなく自賠責保険が判断することとなります。(後遺障害等級とは?〜後遺障害等級の内容〜)

・ 後遺障害等級に該当するかどうかの判断を求める方法には、「被害者請求」と「事前認定」の2つがあり、それぞれのメリットとデメリットを十分に理解しておく必要がありますので、別の記事で詳しく説明したいとおもいます。

∽ 後遺障害等級の認定の仕組み〜被害者請求と事前認定〜

 後遺障害等級に該当するかどうかの審査には、一般的に1ヶ月〜2ヶ月程かかります。
 依頼者の方が放っておかれていると感じるのは、まさにこの時期です。
自分は通院していない(これ以上治療しても治らないといわれている症状固定の時期ですから、通院しない方が多いです。)、任意保険会社からも一切連絡がない、ということで不安に感じてしまうのも無理はありません。
ですが、後遺障害等級に該当するかどうかの審査結果がでなければ、賠償額を確定できませんから、示談に進むことは通常できません。とにかく、待つしかないのです。

任意保険会社から示談の提示

 後遺障害等級に該当するかどうかの審査結果がでると、任意保険会社はその結果にもとづいて「損害賠償金額」を算出することとなります。
 そして、みなさんのご自宅へ、賠償金や簡単な計算式などが記載された書面と免責証書が送付されてきます。
 この書面の見方については別の記事で詳しく説明していますから、これをよんで100%理解した上で、免責証書に署名、押印してください!!
 免責証書に署名、押印して保険会社に送付した後は、交通事故に関する一切の事項について示談(和解)が成立したものとして、その後一切争えなくなりますのでご注意を。

 私としましては、任意保険会社が提示してきた賠償額が妥当なものであるか否かについて、必ず弁護士に相談すべきと考えます。
 そのほとんどが、弁護士が妥当と考える金額よりも低いものになっているでしょう。

交渉 , 示談

 保険会社の提示額に納得して、交通事故に関する一切の件を終了させてもよいと決意した場合には、免責証書に署名、押印の上、保険会社に返送してください。その後に示談金が支払われると、全ての手続きが完了したこととなります。

 他方で、保険会社の提示額が本来支払われるべき賠償額よりも低い額であるとお考えになる場合には、金額を上げるよう交渉する必要があります。
 ご自身で交渉することも可能ですが、保険会社は増額の根拠を説明するよう求めてきますから、プロに任せた方が無難かと思います。

まとめ

交通事故被害にあってから示談までの流れは、
○事故
○治療
○後遺障害等級の審査(1〜2ヶ月程)
○保険会社からの示談金の提示
○交渉
○示談

※ なお、この記事からもわかるように、弁護士が入らなくても示談まで自力でこぎつけることは十分に可能です。
 しかしながら、弁護士に早期に相談することにより、不利益を回避できるというメリットが必ずあります。
 この記事をよんでくださった方々に不利益が及ぶことをよしとしたくはありませんから、少しでも早く弁護士に相談することを強く推奨します。